猫さんロードと裏猫日記

猫を通じて生き方を学んだり

予感

昨日は17時からの夜勤でした。

僕の当直の日に一人のお年寄りが亡くなりました。

前々日の当直の日にこのお年寄りと笑いながら新型コロナで死ぬのは

針の糸を通すようなものでそれで死ぬのは難しいよね、でも人はコロナが

あろうと無かろうと必ずその日が来るわけだからその時まで楽しく生きる事が

最良の人生です、長く床に臥せてしんどい姿を見せるよりは

誰も知らぬ間に息を引き取るのが最良、家族が死に目に会えないような死に方の方が

僕は良いなと思っています、

「○○さんが死ぬ時も僕が死ぬ時もそうあれば最高の死に方です。」

「わしが定時巡回の時にあれっ?○○さん息してないんじゃない」

そうなるよう願いましょう、願いますなんて笑い合ったのですが

それが現実となりました。

事の起こりは21時過ぎの板を叩くような物音でした。

三度その音がする方向へと廊下を歩いていると○○さんの部屋からでした。

戸を開けて入ると転倒されており、僕に知らせるために戸を蹴る音でした。

打ったところは特に無い、痛い所も無い大丈夫と言う事でした。

両手両足もちゃんと動き頭も打っていないし何ともないと言われるのですが

念のためバイタル測定、体温良し、血中酸素濃度異変無し、血圧測定不能

本人は大丈夫何ともないと言い続けますが一応医師の指示で血中酸素濃度が

正常であり痛みも特に無いのなら様子観察との対応となりました。

21時過ぎから午前0時まで数度様子見、その度いつもと変わらないから

大丈夫と言うだけでした。

ここで本人が何かおかしいだとかいつもと違う変調があるだとか

言ってくれればまた事態は変化したかも知れません。

これまでにお年寄りの転倒は何度も体験し、お年寄りが大丈夫と言っても

痛がり方やその変化でお年寄りが医者は呼ぶなと言ってもこっちの判断で

呼んだりするのが普通でした、また救急車を呼んでくれと言っても

手ぶらで救急車を帰らせるような状態の時には呼ぶ事もありませんが

今回は違和感しか無かったのです。

医師も様子見しましょう、本人も何ともないの繰り返し

僕が違和感を感じたのは血圧測定エラー、これだけです

確かに血中酸素濃度は正常だし体温も正常

 

転倒そのものの弊害は恐らく無いと感じました、痛みも無く特に打ったような

跡も無く言葉もハッキリしているから転んだ理由を聞いてみたのですが

足がもつれただけだと言うのです。

ならば何故立てない、何故自分で起き上がれない?

おかしいでしょ?

支えてベッドへ戻っても大丈夫を繰り返すだけでした。

僕が感じたのはしんどいから起き上がらない立ち上がらない

転倒とは別の次元を考えていたのでもしかすると先日の話のリアルが

夜明けに起きてはいないかと言う予感でした。

 

0時半にナースコール、コップ持って来て欲しいとの事で一時頃に持って行く

その時に着替えをしたいと言われ下着を取り換え、パンツが見当たらないので

施設の紙パンツで代用して貰い、帰り際に「ありがとうございました」と

笑みを浮かべられたのが最後に聞く言葉となりました。

部屋を出る前に「あと2時間したら巡回なのでそれまでに異変があればと

ナースコールをして」と部屋を出ました。

 

3時に巡回で部屋に行き見た瞬間で予感がリアルとなりました。

穏やかな表情でまだぬくもりがありますがすが生気が失せているのが

わかりました。

すぐ医師に連絡し看取りをして頂きました。

家族はこうなるのを僕以前に予感していたようでした。

あまり弱音を吐かないお年寄りだったのできっと異変は

自分で気づいていたと思います。

 

夜が明ける前に奥様が葬儀屋と訪れ静かに見送る事になりました。

入居者の誰にも気づかれず良かったし

最良の死に様だなとも感じ、ショックもありませんでした。

いつもと同じ寝顔のままがそれを物語っています。